那須岳火山防災ハンドブック資料
那須岳(茶臼)は、いつかは噴火すると考えられている活火山です.現在の那須岳は大変おだやかですが、過去に噴火した歴史があります.噴火には水蒸気噴火(マグマに熱せられた地下水が噴火する)とマグマ噴火がありますが、後者が本格的な噴火で規模も相当大きくなります.那須火山地質図・日本活火山総覧(第2版)により、その歴史を振り返ると次のようになります.
*那須火山は今から50万年前頃から形成され始め、甲子旭岳・三本槍岳(1917m)・朝日岳(1896m)・南月山(1776m)など時代にとともに活動の場所や噴火の仕方を変化させてきました.これらの火山を合わせて、那須火山群と称されます.約1万6千年前からは、現在の那須岳(茶臼岳1915m)が活動するようになりました.
1万6千年前 :那須岳の形成--最大規模のマグマ噴火
1408-1410 :最新のマグマ噴火
1881 :水蒸気噴火
1953 :水蒸気噴火
1960 :軽微な水蒸気噴火
1963 :軽微な水蒸気噴火
1977 :火山地震群発
那須岳(茶臼岳)は、100年に1回程度の水蒸気噴火が起こっていますが、マグマ噴火は数千年に1回程度と推定されております.1408-1410年の最新のマグマ噴火の範囲を、現在の地図に重ねたものが下図です.土石流は那珂川、余笹川の流域で起こります.水蒸気噴火の場合、降灰厚さ10cmの範囲が、下記の溶岩流到達範囲を円形にした範囲に相当しますから規模の違いがわかります.いずれにしろ風の影響により降灰は広い範囲に及びます(この範囲はあくまでも予想です).

[火山噴火現象の範囲:那須岳火山防災マニュアルより]

火山噴火現象の時間
噴石 1分程度(湯本地区)
・火砕流の熱風 5分以内(黄色の範囲)
・降灰 10分程度(黒磯・那須市街まで)
・融雪型泥流 10分(広谷地・りんどう湖付近まで)
・溶岩流 1〜2時間程度(火口から3kmまで)

------------------------------火山噴火現象のいろいろ-----------
------------------------   
・噴石   : 爆発で砕けた岩石が飛来します.人の頭より大きな岩石が飛んでくることもあります.落下の衝撃で死傷したり、家屋・車・道路などが被害を受けることがあります.H12、有珠山噴火で人頭台の噴石があった.
・火砕流: 火山灰や岩塊が、火山ガスと一緒になって急速に流下する現象です.流下速度は時速百kmを超えることもあります.内部は高温で、数百度以上になります.火砕流上部の熱風(火砕サージ)の部分は、多少の地形の凹凸を乗り越えて広範囲に広がることもあります.H3、雲仙普賢岳噴火・H12の三宅島雄山噴火でも火砕流による大きな被害がありました.
・融雪型泥流: 高温の火砕流が積雪を覆うと、雪氷を急速に溶かして泥流が発生することがあります.大量の泥水が短時間に生産され、降雨による土石流に比べてはんらんの範囲も広くなりがちです.流下の途中で樹木や大きな岩を巻き込むことによって破壊力が増します.
・溶岩流: 高温のマグマが火口から流下する現象です.マグマの粘り気が強い場合には、溶岩ドームという盛り上がった地形を作ります.過去の那須岳の噴火でも溶岩ドームが形成されています.硫下速度はさほど速くありませんが、斜面では火砕流や落石を発生させることがあるので、溶岩流付近は危険です.H3、雲仙普賢岳では溶岩ドームが顕著でした.
・降灰   : 火山噴火が発生すると火山灰や火山ガスが放出されます、噴煙が形成されます.噴煙は風に流され、風下では火山灰が降ってきます.10cm以上灰が積もると、建物などに被害が出始めます.量が少なくても、道路の視界が悪くなるなどの影響が出ます.広範囲に降灰があると、道路などの復旧のためには大量の火山灰を除去する必要があります.除去した灰の捨て場所も、大きな問題になります.H12、有珠山西山噴火・三宅島雄山噴火でも降灰が著しく、後者では火山ガス流出により全島民避難を余儀なくさたことは記憶に新しい(2005年2月解除).

情報の提供・お問い合わせなど
黒磯那須消防組合(代表) (0287)62-0736
黒磯市役所(代表) (0287)62-7111
那須町役場(代表) (0287)72-6901
宇都宮気象台 (028)633-2767
⇒戻る